インバウンドツーリズムとは?訪日外国人旅行者の増加について解説
インバウンドツーリズムとは、日本へ旅行に来る外国人による観光活動全般を指す言葉です。
近年、日本政府の積極的な取り組みやSNSを通じた日本の魅力の発信により、訪日外国人旅行者数が急増しています。本記事では、インバウンドツーリズムの概要やメリット、インバウンドツーリズムの成功事例などについて詳しく解説します。
インバウンドツーリズムの可能性や重要性が分かりますので、インバウンドツーリズムをはじめとした観光業界に関心がある方は、ぜひ最後までお読みください。
目次
インバウンドツーリズム(Inbound Tourism)とは?
インバウンドツーリズムは、訪日外国人旅行者と訳され、一般的には外国から日本に来る旅行者を指す言葉です。
反対に、日本人が海外に旅行することは「アウトバウンド」と呼ばれています。
インバウンドは直訳すると「入ってくる」という意味ですが、インバウンド単独でも訪日外国人旅行者を表す言葉として広く使われています。
そのため、インバウンドツーリズムは、日本へ旅行に来る外国人による観光活動全般を指す言葉と理解しておくと良いでしょう。
外国人旅行者が増加すると、主に経済面で大きなメリットがあるため、日本政府は観光立国を目指してインバウンドツーリズムの拡大に力を入れています。
インバウンドツーリズムが増加している背景
インバウンドツーリズムは近年急速に拡大しています。
理由はさまざまですが、主に以下の3つの理由が挙げられます。
- 中国をはじめとしたアジア諸国の経済成長により海外旅行に出かける人々が増加した
- 日本政府による観光ビザの緩和や格安航空会社(LCC)の就航の増加により、日本への旅行がより手軽になった
- インターネットやSNSを通じて日本食や日本文化が広まり、世界中から日本への関心が一層高まった
これらの要因が相まって、訪日外国人数は2013年に初めて1,000万人を突破しました。
その後は毎年増加し、新型コロナウイルス流行前の2019年には3,188万人に達しています。
政府が主導するインバウンド拡大へのアクション
日本政府は、インバウンドツーリズムの拡大に積極的に取り組んでいます。
2001年頃の訪日外国人旅行者数は、日本人海外旅行者数の約4分の1、 国際旅行収支は約3.6兆円の赤字でした。外国人が日本で消費する金額よりも、日本人が海外で消費する金額のほうがはるかに多かったのです。
このような状況を受けて、訪日外国人旅行者数と日本人海外旅行者数との差をできるだけなくそうと、2002年にグローバル観光戦略が策定されました。グローバル観光戦略では、日本への旅行の促進や外国人旅行者の受け入れ態勢の強化などの4つの戦略を、官民一体となって取り組むとされています。
また、観光立国の実現に向けて2008年には観光庁も設置され、観光インフラの整備や地方の観光資源の発掘など、多角的なアプローチが進行中です。
政府は2030年までに訪日外国人旅行者数6,000万人達成を目標に掲げており、今後、インバウンドツーリズムの更なる成長が予想されます。
インバウンドツーリズム増加の2つのメリット
インバウンドツーリズムの増加は主に経済面で日本に恩恵をもたらしています。
以下の2つのメリットについてそれぞれ詳しく見ていきましょう。
- 経済的恩恵を受けられる
- 地方活性化につながる
経済的恩恵を受けられる
訪日外国人が日本で宿泊や飲食、土産などのショッピングに消費した金額は、2019年には約5兆円に達しました。2012年には約1兆円だったため、数年の間に急激に増加したことがわかります。
国別では中国からの旅行客による消費が全体の1/3以上を占め、東アジア全体では約6割を占めています。
一方、一人当たりの消費支出ではオーストラリア(24.8万円)、イギリス(24.1万円)、フランス(23.7万円)など欧米からの旅行客が上位です。
人口減少や経済低迷で国内消費が落ち込むなか、インバウンド消費は小売業や宿泊業、地域経済にとって重要な収入源となっています。
地方活性化につながる
外国人旅行者の増加によって、ホテルや観光施設での雇用が創出されます。
また、外国人旅行者の多様なニーズに応える新たな観光サービスの開発が進み、ビジネスチャンスも生まれています。
たとえば、茶道や陶芸、茶道や着付けといった体験型観光や多言語対応サービスなどが良い例です。
さらに、外国人旅行者を通じて日本文化への世界的な関心や評価が高まれば、日本の伝統文化の保護や継承が進むきっかけにもなります。
このように、インバウンドツーリズムは経済的恩恵だけでなく、地方の活性化や文化の保護にもつながる可能性があります。
インバウンドツーリズム増加による4つの課題
メリットの多いインバウンドツーリズムの増加ですが、同時に以下のような課題が生じる場合もあります。
- 経済がインバウンドに依存する危険性
- 環境にやさしい観光の実現
- オーバーツーリズムによる影響
- 観光客のニーズにあったサービスの提供
インバウンドツーリズムの何が原因で課題が生まれるのか、順番に見ていきましょう。
経済がインバウンドに依存する危険性
インバウンドツーリズムに過度に依存した政策は、経済の安定性を損なう恐れがあります。
なぜなら、新型コロナウイルスやSARSなどの疫病、震災、戦争や外交問題などの外的要因によって大きく変動する可能性があるためです。
訪日外国人旅行者数が外的要因によって減少すれば、インバウンドが主な収入源だった事業者や地域は、経済的に大きなダメージを受けるでしょう。
経済の安定性を図るためには、インバウンド需要のメリットを受けつつ、国内需要のバランスも適切に保つことが理想とされています。
環境にやさしい観光の実現
インバウンドツーリズムの増加に伴い、環境への配慮が重要な課題となっています。
日本は島国であるため、訪日外国人の多くが CO2 排出量の多い飛行機を利用せざるを得ません。
そのため、環境にやさしい観光の実現には、国内移動や滞在中の環境負荷削減に焦点を当てる必要があります。
具体的な取り組みとしては、地産地消を徹底してフードマイレージ(食料の輸送距離)を下げることや、宿泊施設や観光施設で自然由来のエネルギー利用率を高めることなどが挙げられます。
環境意識の高い人や若い世代にアピールするためにも、環境に配慮した持続可能な観光の実現は重要です。
オーバーツーリズムによる影響
オーバーツーリズムとは、観光客が特定の地域に集中し、地域住民の生活や自然環境、景観などに過度な負荷をかけることです。
オーバーツーリズムは観光客の満足度低下にもつながる可能性があります。
たとえば、フィリピンのボラカイ島では、観光客の急増で海や砂浜が汚染され、自然環境保護のためビーチが閉鎖されるといった事例も発生しました。
一方で、観光のメリットを認識し、観光客増加を歓迎する地域住民も多くいます。
観光客のニーズと住民の生活環境のバランスを取り、両立することが理想的な観光のあり方といえるでしょう。
観光客のニーズにあったサービスの提供
観光客の多様化するニーズへの適切な対応も課題です。
たとえば、利便性の観点からキャッシュレス決済、なかでもクレジットカード決済を望む観光客は多くいます。
しかし、特に地方の施設や小規模な店舗などではキャッシュレス決済への対応が十分に進んでいません。
近年では電子マネーやバーコード決済も普及していますが、ほとんどが日本独自のシステムであり、外国人旅行者が使いこなすのは難しいでしょう。
また、言語や文化の違いによってコミュニケーションが取れず、外国人旅行者のニーズを正確に把握できないケースもあります。
言語や文化の違いを乗り越えて、外国人旅行者のニーズに適切に対応する体制づくりが求められています。
インバウンドツーリズムの3つの成功事例
インバウンドツーリズムの3つの成功事例を紹介します。
- 【北海道ニセコ町】外国人旅行者目線に立った観光運営
- 【岐阜県高山市】住民と観光客の両方に配慮した観光地
- 【佐賀県】ターゲット分析とロケツーリズムへの特化
詳しく見ていくと、それぞれ地域の特徴を活かした独自の戦略を取っているのが分かります。
【北海道ニセコ町】外国人旅行者目線に立った観光運営
北海道ニセコ町は、外国人旅行者の目線に立った観光運営で高く評価されています。
ニセコの最大の魅力は、水分量の少ない高品質なパウダースノーです。
しかし、ニセコ町はこの自然の恵みに頼るだけでなく、多様なスキー場やコース、充実したナイター設備など、観光客を継続的に惹きつけるスキー環境の整備にも力を入れています。
さらに、外国人旅行者への配慮が行き届いた町づくりをしている点もポイントです。
看板やメニュー、接客などにおいて、英語をはじめとした多言語でのサービスを展開し、外国人旅行者にとって便利で居心地の良い滞在環境を提供しています。
外国人旅行者の目線に立った総合的な取り組みで成功を収めたニセコ町の事例は、他の観光地のモデルケースとなっています。
【岐阜県高山市】住民と観光客の両方に配慮した観光地
岐阜県高山市のインバウンドツーリズムの特徴は、住民と観光客の双方に配慮した観光地づくりです。
1996年頃から海外プロモーションを本格化した高山市は、多言語対応や民間企業支援など、インバウンド誘致活動を継続的に実施してきました。
同時に、市民の幸せを最優先と考え、インバウンド誘致によって影響を受ける住民生活への配慮も大切にしてきました。
また、本物の日本文化を体験したいという、外国人旅行者のニーズを的確に捉えたコンテンツづくりにも成功しています。
地域の風習や日常生活、街並みといった地域ならではの特徴を生かし、観光資源として活用しているのが特徴です。
このように、高山市では、観光客と住民の両方が満足できる持続可能な観光地づくりを実現しています。
【佐賀県】ターゲット分析とロケツーリズムへの特化
佐賀県がおこなったインバウンドツーリズムは、綿密なターゲット分析とロケツーリズムへの特化が特徴です。
佐賀県へのロケ誘致・支援をおこなう佐賀フィルムコミッションは、佐賀へのアクセスのしやすさや日本の他地域でのロケ実績、親日度などを分析し、タイをターゲットにしたロケツーリズムを展開しました。
ポイントは、「佐賀だけにあるもの」ではなく「佐賀にもあるもの」で誘致をおこなう戦略です。
桜や城、忍者といった日本らしい景観が、東京や京都に行かずとも佐賀で撮影可能である点をアピールしました。
この結果、佐賀県をロケ地としたタイ映画『タイムライン』が大ヒットします。
映画のロケ地を中心に多くのタイ人観光客を呼び込むことに成功した佐賀県は、インバウンドツーリズムの好例となっています。
まとめ:ますます増加するインバウンドツーリズム!発展していく観光業界への就職なら専門学校がおすすめ
インバウンドツーリズムは、今後さらなる成長が期待されます。
近年は新型コロナウイルス関連の規制緩和や円安の影響で、海外から日本への旅行がしやすい状況が続いています。
また、SNSを通じて日本の景色や文化といった魅力が世界中に拡散され、日本に対する関心がいっそう高まっています。
さらに、政府も観光立国をアピールしており、インバウンド誘致をますます推進する見込みです。
インバウンドツーリズムが発展した観光業界では、語学力をはじめ、接客や観光業に関する専門的な知識やスキルを持つ人材が重宝されます。
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